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125. 人工湖のそばで倒れ助けられる

by Kyrie

限界だった。
胃痛がひどい。
もう歩きたくない。
鉛を詰めたような胃を抱え、私はとりあえずひどい痛みをやり過ごそうと思った。
もう歩きたくない。
お腹を抱えて丸くなって横になりたい。

私はそうした。
そこは池があった。
あとで確認したがそれは人工湖だった。
地図がないのにどうやって確認したのかと言えば、必ず泊まるアルベルゲや教会、行った店で目を光らせ情報を得るのだ。
新しいアルベルゲの広告チラシ。
教会の案内パンフレット。
とにかく地図が載っているものを吟味し、それと黄色い矢印を手掛かりに歩いていく。
英語表記のその情報の意味を調べたんだと思う。

とにかく、私は赤いザックを下ろし、もたれかかるように横になった。



何人か巡礼者が通り過ぎた。
声がする。
私はもう元気がなくなってじっとしている。
早く行ってほしい。
私に構わないでほしい。
今、この状況をめんどくさい英語で話すのもいやなんだ。
閉じさせてくれ。


そうやって誰も話しかけず、通り過ぎていき、
私は不安ながらも内心ほっとしていた。

もう誰も来ないでほしい。
私のリズムでいさせてほしい。


それを打ち破ったのは屈強なおぢさまたちだった。
なぜか会話の意味がわかった。
「人が倒れている」
「巡礼者か?」
「巡礼者だ」
「怪我か?
死んでいるのか?」
「死んではなさそうだ。
怪我はわからない」

このとき、彼らが何語で話していたのか、実はよく覚えていない。
でもそう言っていた。
そして5人の男の人が私を囲み、怪我の有無を確認しながら、英語で私に話しかけた。




私は英語で答えた。
「お腹が痛い。
もう少し休む。
大丈夫」

4人のおぢさまは話し合う。
それはすぐに終わった。

「君をこのまま放っていくわけないはいかない。
安心して。
僕たちはドイツから来た巡礼者だ。
次の街のアルベルゲまで送ってあげる」
そうして私を安心させるために顔写真つきのIDカードを見せてくれた。
IDカードを持たない私にはその価値や信憑性はわからなかった。
わかったのは、とにかく彼らは私に不信感を抱かせないようにすること。
本当に心配していること。
助けてあげたいと思っていること。

私はそれを受けることにした。

彼らも大きなザックを抱えているのに、トレッキングポールに私の赤いザックを挿し、
2人で左右からポールを持ち、私の荷物を運んでくれた。
私はただ、歩くだけでよかった。

申し訳なかった。
どうしようかと思った。
しかしあのままでは次のテはない。
私は死ぬわけにはいかないんだ。



途中で「まだ胃が痛いか。薬を飲んだのか」と聞かれた。
私は飲んでいない、と答えた。
中の一人がまたカードを見せた。
「自分は医者ではない。
けれど医療のことはわかる。
この薬は悪いものではない。
あなたに飲ませたい。
いいか」
カードにはレッドクロスがついていた。
彼らは真剣だった。
私はお願いしますと答えた。

強風だった。
液体の飲み薬で、風にはやり薬はスプーンに注ぐのにすぐに飛ばされる。
たくさんこぼれた。
貴重な薬なのに彼らはなんとかして、私に薬を飲ませようとし、私は飲んだ。
飲むと安心した顔をし、「これで治るよ」と言った。




結局、そのおぢさまたちと何キロ歩いたのだろうか。
「あの街だよ」と指さしてくれ、古い教会の塔が見えた。

アルベルゲに着いた。
まだ午前10時だった。
ここのオープンは13時だった。
おぢさまたちは呼び鈴を何度も鳴らし、電話もかけてくれた。
しかし反応はなかった。
それは仕方ないと思った。
アルベルゲにもいくつか基準が必要だ。
我儘な巡礼者もたくさんいる。
「ちょっとくらいいいだろ」につき合っていたら、すぐにすべてが崩れてしまう。

その頃には最初の頃の痛みよりかは和らいでいた。
私はおぢさまにこのまま待つと言った。
彼らは一緒に待とうか、とも言ってくれたが、私はそれには首を縦には振らなかった。

そして私がお礼と、なにもお返しができないことを申し訳なく思っているとおぢさまが言った。
「カミーノでは親切にされることがたくさんある。
しかし、二度と会えないことが多い。
なにか返すことは難しい。
だから次は他の人に親切にしなさい。
それが連鎖していく。
僕たちにお礼をするんじゃなく、次にあなたが別の人に親切にしなさい」

おぢさまは私を心配そうにしながらも歩き始めた。
私はアルベルゲの中庭の大きな木の下で、
また赤いザックにもたれるようにして横になり、アルベルゲが開くのを待った。







Kyrie
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