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124. 黄色い矢印を失う

by Kyrie

アルベルゲ(巡礼宿)は洒落たデザイン。
出発した門もこんな具合。



こんな絶景が広がるのに、楽しむ余裕はなかった。
突然襲う腹痛。
朝食も食べていない。
奪われる体力。
こみ上げる不安。

そして、道を失う。
工事中で矢印が消えているようだ。

老年の女性が巡礼姿の私を見つけ、「こっちの道ではない!」とスペイン語でまくしたてているようだ。
私には理解できない。
痛む腹を抱え、教えられた通り来た道を戻る。
しかし唯一の頼りの黄色い矢印はやはり、私がさっき進んでいた方向を差している。

私はゆっくり歩いていたので、周りに他の巡礼者はいない。

仕方なくまたさっきの道を行く。あの女性が私を見つけすごい剣幕で怒り出し、まくしたてる。

私は仕方なくまた戻る。

少しでもエネルギーを身体に入れようとキャンディーを舐めるが、それも異物として胃は受け付けず、
途中キャンディーも吐き出してしまう。

矢印はどうやってもこっちだ!
私が頼れるのはこの黄色い矢印しかない。
私は女性がいないのを見計らい、自分が信じる道を歩く。

黄色い矢印は見つからない。
焦る。
続く胃痛。
脂汗が出る。



道なき道のような雑木林に行きついたとき、木の幹に黄色い矢印。このときほどほっとし、嬉しかったことはなかった。

木々の間を歩くとまた新しい矢印。また新しい矢印。

私はようやく自分が間違った道を歩いていない、と確信できた。それまでは気が気ではなかった。





Kyrie
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