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071. 天国のようなアルベルゲ

by Kyrie

そのアルベルゲは工事真っ最中の土地に囲まれていた。
機械で深く掘り起こされた粘土質の地面は、歩きにくかった。



強い日差しの中、教会のそばの建物の入り口は日本でいう簾のようなもので覆われていた。
日差しを遮り、風を通し、中からは外の様子が見える。
そのそばでひとりの女性が本を読んでいた。

私が声をかけると、愛おしそうに迎え入れてくれた。
彼女は夫と二人でこのアルベルゲの世話をするホスピタレイロだった。



先に到着していたマリも私を出迎えてくれ、再会を喜んだ。
しかし、ホスピタレイロの女性は、私たちがフレンチルートを歩き、
噂で逆走したことを知るとひどくしかった。
「カミーノは常に前に進みます。
面白いからといって、後戻りはしません」

そんな噂が広まるのがいやで、ガイドブックにも載せていないのだと言う。

私は素直に謝り、常に進むことを決めた。


ホスピタレイロの女性はスペイン人だった。
マリは練習とばかりにスペイン語で彼女に話しかけた。
彼女は「待って」と言った。

「彼女はスペイン語がわかるの?」
私が首を振ると、ホスピタレイロの女性は静かにマリに言った。

「彼女がわからないのなら、スペイン語を使うべきではないわ。
英語で話しましょう」

このとき、私はとても嬉しかった。
ことばがわからないことで、寂しい思いもしたし、いらいらもした。
他の人たちが分かり合っている中で、それに入れないのは悲しかった。

一方で、「あ、またわからないんだ」とも思った。
少し慣れていた。

ホスピタレイロの女性は、私に居場所を作ってくれたような気がした。
嬉しかった。
本当に、本当に、嬉しかった。





Kyrie
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