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072. 包まれて過ごしながらものを手放す

by Kyrie

アルベルゲのそばの教会は小さかったが、とても丁寧に手入れがされていた。
厳かで怖い印象の教会が多い中、ここはほんわかと暖かい気持ちになった。


ホスピタレイロの旦那さんのほうは背の高い寡黙な男性だった。
そこに泊まるペリグリーノの荷物を確認して、「これは重過ぎる」と言った。
私も自分の体重とザックの重さを知ると、「重過ぎる」と言った。
奥さんは「人は余計なものを持ちすぎるのよ」と言った。

アルベルゲにはカゴがあった。
そこには巡礼者が不要だと思ったものが置かれていた。
もし必要なものがあったら、なんでも持って行っていい、と言われた。
私も手拭いを一本、そこに置いてきた。

寒いと思って防寒の下着も必要ないと言われた。
それは少し高価だった。
「彼に言えば、荷造りしてくれるわ」と奥さんが言い、
私は旦那さんにお願いして、日本に送り返すことにした。



夕食は旦那さんが作ることになっていた。
なにか手伝おうかと言うと、
「彼はキッチンにあまり人が入るのを嫌がるの。
だから私も滅多に入らないの」
と奥さんが言った。

実際その通りだったが、お皿を並べるのは許可が出た。

手作りの料理はおいしかった。
大皿に盛られた料理を少しずつ取って食べるのだが、
私は目の前の料理から手をつけた。
それがたまたまお米のサラダだったのだが、
「やっぱり日本人ね。
お米から食べてるわ」
と言われた。

うーん、違うんだよなぁ、と思いながら黙って食べた。




ここのホスピタレイロは、あるキリスト教の団体から派遣されていて交代制なのだと聞いた。
そこからお給料が出るし、面白そうだからと旦那さんと二人で来たのだと、彼女は言った。
二人の厳しくて深くて丁寧なおもてなし具合は、素敵だな、と思った。

数年後、知り合いのペリグリーノがここに泊まったが、様子がまったく違っていたそうだ。

夕食の片づけが終わるとホスピタレイロの二人は言った。
「明日の朝、みなさんは早いけど私たちは寝ているので、今晩から明日の準備をしておくわ。
ごめんなさいね。
明日は好きに食べていってね」

食堂からペリグリーノは出された。
私たちは歯磨きをしたり、荷物の準備をしたりして、就寝した。





Kyrie
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